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秋田は地元なので親父の実家だった。
この家のすぐ隣に真澄ちゃんは住んでいた。
可愛い感じの女の子、俺より二つ年上でよく面倒を見てくれた。
田舎だから庭も広く(笑)よく庭先で遊んだものだ。
初恋?の相手とお別れだ。
転勤先は福島、同じ東北とは言え距離はかなりある。
盆と正月に帰る以外は特に戻らない。
この時期に帰っても真澄ちゃんとはなかなか会えない。
田舎の盆と正月は来客も多いし以外と忙しいのだ。
それでもたまに会うとチョコチョコ話しはしていた。
俺が中三の時に再び転勤の話しが出た。
前年宮城に転勤したばかりだったのでかなり驚いた。
この頃、祖父の体調も悪く、入院などがあり心配になった親父が相談の上再び地元に転勤願いを出したらしい。
三年生で突然の進路変更で秋田の高校を受験する事になった。
知らない学校は嫌だったがしょうがない。
とりあえず勉強はそこそこ出来たので心配無いと親も判断したのだろう。
とは言えピリピリはするもんだ。
秋田は受験する予定も無かったからどんな高校があるかも良く解らない。
そんな時にはやはり知ってる人の方が聞きやすい。
「真澄ちゃんに聞いてみな」と無責任に母親は言うが、年頃なので声を掛けづらい。
すると母親が声を掛けたのか夜に真澄ちゃんが来てくれた。
元々整った顔だったがさらに綺麗な顔になっていてちょっと恥ずかしかった。
「こんにちは、お久しぶりです」なんて俺がよそよそしい雰囲気になるのはしょうがない。
俺の手持ちの資料は学校で紹介されて貰ったパンフと本屋で買った受験ガイド一冊だ。
「うちにおいでよ!ちょっと古いけど資料も色々あるよ」と誘いを受けてお邪魔した。
初めて入った部屋では無いが、雰囲気がガラリと変わっていた。
そんな部屋にちょっとドキドキした。
雑談しつつ近況報告、どの程度の学校を受けるのか、噂などを含めて色々だ。
最終的に候補を三つ挙げた。
この中に真澄ちゃんが通う高校もある。
進路指導の先生にも候補として薦められていた。
「校舎も綺麗だし荒れたりとか無いよ」との言葉と知り合いが一人でも居るって所で第一志望をここに決めた。
親とも相談、先生にも報告をした。
この相談以来再び挨拶以上の交流を持つ様になった。
俺を気遣かってくれてるのも解った。
ある時に塾も近くに無いから受験までの間、家庭教師を付けられた。
特に必要とは感じ無かったが週に二度我が家にやって来た。
これまた母親の知り合いの娘さん。
大学生で優秀らしい。
この先生は俺をコントロールするのが上手かった。
何かを期待させるような雰囲気を持っていてやる気を掻き立てた(笑)とは言えなるべくエロい気持ちは持たない様に努力した。
当時は純情な(笑)俺はこの頃に再び真澄ちゃんへの気持ちが沸き上がっていたからだ。
だから下心を持つ事は罪だと考えていた。
「時々来るあの女の人が家庭教師?」そう聞かれた時は意味も無く焦りを感じた。
悪く思われたく無い、と考えていたからだ。
「うん…あの家庭教師ね…」と興味は無いよと言う内容を話した。
「ふ~ん、まぁ良いけどさ…」と不機嫌なのかな?という顔を見せていた。
「弟みたいなしんちゃんがお姉ちゃんとしては心配してるんだよ!」と言われた時はガッカリだった。
勝手に憧れたけど、あ~そうですか…と撃沈された船が頭に浮かんだ。
「え~?何暗い顔してんの?私がお姉ちゃんじゃ嫌なのかよ~」「え!?別に…嫌じゃないよ、頼りになるお姉ちゃんだからね!」努めて明るく返した。
その晩はガッカリし過ぎて寝付きが悪かった。
家庭教師の由香先生に後日こんな質問をした。
「先生が高校生位の頃って、年下の男の子ってどう思いました?」「年下?う~ん、高校の頃は特に何とも…」沈没した上からさらに爆弾を落とされた気分だった(笑)「ですよね~!」なんて笑って返したが相当ショック。
「誰誰誰?誰か友達の話し?」「まぁそうですね、相談されて先生に聞いてみてくれって言われて…」と適当な言い訳。
すると真面目な顔で言われた。
「でもね、私がそうならなかったのは当時そういう人もいなかったからね、もし告白されてその人が嫌じゃなければきちんと考えたと思うよ、状況が解らないから何とも言えないけど告白するのは悪く無いと思うよ、結果は解らないけど」と。
「ですよね~…」との返事に由香先生から「ひょっとしてしん君が…私に?」と聞かれたが「確実に違います」と即答した。
俺は当たって砕けたら真澄ちゃんが卒業するまで辛いな~と考えていた。
真澄ちゃんとは話しはするがついつい意識してしまった。
「なんか悩んでんの?しん君なら受験も大丈夫だよ」イヤイヤ…それじゃないです。
と思うが適当に笑ってごまかした。
「気分転換にカラオケ行こうよ!」と誘われた。
土曜日の午前中に気分転換がてら寒い庭先でボケっとしてたら声を掛けられた。
最近は家と学校の往復しかしてないな、と思い親に一言断りを入れて真澄ちゃんのバイクの後ろに乗せて貰って向かった。
田舎のカラオケだ(笑)元々アパートだったのか造りがワンルームマンション的だ。
何曲かお互い歌うと真澄ちゃんから声を掛けて来た。
「最近暗い気がするけど…受験で思い詰めなくても大丈夫だよ」「う~ん」と曖昧な返事をした。
だって気にはなるけど受験ではナーバスになってないから。
由香先生の言葉を思い出しつつ悩んでいた。
「フフフッ…」と思わず笑いが出てしまった。
悩みはそこじゃないんだよ!と言えない自分を考えていたらつい自分に可笑しくなってしまったのだ。
「え?今の笑いは何?何?」真澄ちゃんは意図が掴めず聞いて来た。
自分でも意識せず出た笑いなのでごまかす言葉も出なかった。
「良いけどさ…」そう言ったきりちょっと部屋を沈黙が支配した。
「あのね…」と堪え切れずに切り出したのは俺。
「うん」と頷き身を乗り出す真澄ちゃん。
言葉が続かず下を向いてどうしようか悩む俺。
そのまま真澄ちゃんは黙って待っていた。
「あの~…えぇっと…何と言うか…困ったな」「うんうん…ゆっくりで良いよ」ま~言葉を選ぶのに悩みましたよ。
でもここまで来たら思い切る事にした。
「好きなんです…昔から!」すっげぇ早口だったと思う。
「え?何何?」と理解してない。
「だから!真澄ちゃんが好きで悩んでるの!」身を乗り出したまま固まっている姿を見て顔から火が出る位暑かった。
「え!?しん君があたしを?」コクッと頷き反応を待った。
「…そうか…ありがとう」…で?ありがとうの続きは!!良い、駄目?と駆け巡る。
真澄ちゃんは暫く考え込み黙っていた。
「…じゃあ…付き合っちゃう?あたし年上だけど」「良いの?」と逆に驚いた。
無理だと思ったから。
「なんだ~!それが悩みか~(笑)」と笑っていた。
「私もしん君の事好きだよ!」「じゃあこっちに来てよ!」とバンバンッとソファーの隣を叩いて俺を呼んだ。
半分恐る恐る、以外な展開に戸惑いつつ隣に座った。
「驚いてんの?」と聞いて来た。
「絶対に駄目だと…」言ってスッキリしたがこの後を悩んだ。
「ハイ!じゃあちゃんと言って~」俺の方を見ながらニコニコしている。
その笑顔を見てると…からかわれてるのかな?とも思った。
「まーちゃん、冗談じゃないよね?」そんな問いに驚いたんだと思う。
「え~~!?冗談とかで言わないし、真面目に言ったんだけど?」「イヤごめん、今でも嘘みたいで…」あたふたする俺を見ながら笑っていた。
「はい!じゃあ証拠にね…ハイ!」目をつむりこっちに唇を突き出した。
キスしろって事らしい。
「え…」迷ったがそのまま軽く口を付けた。
「これで大丈夫?ふざけてたらここまではしないでしょ?」そう言われた。
天にも昇る気持ちというか、後の記憶はあやふや。
スッキリした気持ちでその日は帰った。
「あんた随分明るくなったね?」と母親から驚かれたから余程暗かったのかも知れない。
受験もあるし放っておいた方が良いと思ってたみたいだ。
とは言え受験生、そんなに遊んではいられない。
一緒に行動するのは時々だ。
学校も方向が違うから一緒に途中まで、なんて事も無い。
「受験終わるまではしょうがないよ」とお互い諦めていた。
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